「うるう時間」というニュースを見て、時計が急に1時間ずれるのかと身構えた方もいるのではないでしょうか。
実はこの制度、これまで数年おきに話題になっていた「うるう秒」を廃止する代わりに導入が検討されているもので、2027年からのスタートが視野に入っています。
この記事では、うるう時間とは何か、うるう秒との違い、そもそものうるう年との関係まで、主婦目線でひとつずつわかりやすく整理していきます。
読み終わるころには、SNSでも見かけた「1日25時間になるの?」という疑問も、きっとスッキリ解消できるはずです。
うるう時間とは?1時間まで許容する新ルールの中身
うるう時間とは、世界の標準時刻(UTC)と、地球の自転をもとにした時刻(UT1)とのズレを、最大で1時間まで許容するという新しいルールのことです。
国際度量衡局(BIPM)が第28回国際度量衡総会(CGPM)に向けて作成した決議案に盛り込まれていて、10月にフランスのベルサイユで開かれる総会で審議・採決される予定になっています。
なお、この決議案そのものは2026年3月末の時点ですでに作成・公開されていたものです。
日本国内では2026年8月24日に共同通信が配信したことで一気に話題になりましたが、実は数か月前から専門家のあいだでは知られていた話なんですよね。
……と、ここまで聞いて「え、時計が1時間もずれるの?」と思った方。
私も最初のニュース速報を見たとき、正直同じことを思いました。
SNSを覗いてみると、「1日25時間の日ができるってこと?」という投稿もちらほら見かけたんですよ。
いや、そこまで振り切ったら祝日どころじゃないですよね、と思わずツッコミたくなりました。
でも安心してください、そういう話ではないんです。
「1時間まで許容する」というのは、地球の自転が原子時計とズレていっても、そのズレが1時間に達するまでは時刻をいじらずに放っておいていい、という意味なんですよ。
実際にズレが1時間分たまるまでには、数百年単位の時間がかかると見られています。
つまり私たちが生きているあいだに、時計そのものが1時間ずれるような出来事は起きない、ということなんですよね。
「うるう時間」という名前のインパクトが強すぎて、誤解が広がってしまった側面が大きいのではないか、と私は見ています。
うるう時間とうるう秒の違いは?呼び方が変わった理由
これまでニュースでよく聞いていたのは「うるう秒」という言葉だったと思います。
うるう時間とうるう秒、いったい何が違うのでしょうか。
うるう秒はどんなしくみだったのか
うるう秒は、原子時計をもとにした協定世界時(UTC)と、地球の自転をもとにした世界時(UT1)とのズレを、1秒単位でこまめに調整するしくみでした。
ズレが0.9秒以内におさまるよう、数年に一度、1秒を挿入する(必要なら削除する)という形で運用されてきました。
1972年の運用開始以来、これまでに27回実施されていて、そのすべてが「1秒を加える」調整でした。
直近では2017年1月1日に実施されています。
日本時間でいうと、午前8時59分59秒のあとに、本来存在しない「午前8時59分60秒」が挿入されるという形で行われていました。
うるう時間ではどう変わるのか
一方のうるう時間は、ズレの許容範囲そのものを0.9秒から3600秒(1時間)まで、一気に広げるという発想です。
うるう秒のように毎回こまめに調整するのではなく、ズレをある程度ためておいて、遠い将来にまとめて見直そうという考え方なんですよね。
表にすると、こんな違いになります。
| うるう秒 | うるう時間 | |
|---|---|---|
| 許容するズレ | 0.9秒以内 | 最大1時間(3600秒) |
| 調整の頻度 | 数年に1回程度 | 数世紀にわたり調整不要の見通し |
| 対象期間 | 1972年〜(廃止方針) | 2027年5月20日〜(導入予定) |
こうして並べてみると、「こまめに何度も直す」から「まとめて先送りする」への発想の転換だということが、よく分かるのではないでしょうか。
そもそもうるう年とは?うるう時間・うるう秒との違い
「うるう」とつく言葉が3つも出てきて、頭がこんがらがってきた方もいますよね。
ここで一度、整理しておきましょう。
うるう年は、地球が太陽のまわりを一周する「公転」のズレを調整するためのものです。
1年はきっちり365日ではなく、実際には365.2422日ほどかかっているため、そのズレを4年に一度、2月29日を追加することで帳尻を合わせています。
一方で、うるう秒やうるう時間が調整しているのは、地球が自分自身でぐるりと回る「自転」のズレです。
地球の自転速度はわずかに不規則で、原子時計がきざむ正確な1秒とのあいだに、少しずつ差が生まれてしまうんですね。
つまり、うるう年は公転、うるう秒・うるう時間は自転のズレを直すためのもの。
対象がまったく違うので、うるう年とうるう秒(うるう時間)に直接の関係はありません。
同じ「うるう」という漢字が使われているせいで、私自身も長いあいだ、なんとなく仲間だと思い込んでいました。
正直、恥ずかしい話です。
うるう時間はいつから?2027年5月20日までのスケジュール
うるう時間の導入は、まだ「決定」ではなく「決議案」の段階です。
ここは記事を書くうえでも、慎重に扱いたいポイントなんですよね。
流れを時系列で整理すると、こうなります。
| 時期 | 動き |
|---|---|
| 2022年 | 第27回CGPMで、うるう秒を廃止する方針そのものが決定 |
| 2023年12月 | 国際電気通信連合(ITU)も同様の方針を決議 |
| 2026年3月末 | BIPMが具体的な上限値と施行時期を盛り込んだ決議案(第3版)を作成 |
| 2026年10月13〜15日 | フランス・ベルサイユで第28回CGPMを開催、決議案を審議・採決 |
| 2027年5月20日 | 採択されれば、うるう秒による調整をしない「連続的な協定世界時」に移行 |
つまりうるう秒を廃止する方針自体は、実は2022年からすでに決まっていたんです。
今回のニュースは、その「いつ・どこまで」を具体的に決める最終段階に入った、というタイミングの話だったんですよね。
10月の総会で正式に採択されれば、2027年5月20日、実は「世界計量記念日」にあたる日から、新しいルールがスタートする見込みです。
なぜこの日なのかというと、1875年5月20日に、単位の国際的なルールを定めた「メートル条約」が成立しているからなんですよね。
節目の日にきっちり合わせてくるあたり、さすが計量の総本山という感じがします。
ちなみにこの総会では、うるう時間だけでなく、「秒」そのものの定義をより高精度に見直す方針や、月面活動で使う「月の時刻」の基準についても話し合われる予定なんだそうです。
宇宙開発が進むいまだからこその議題だなと、調べていてしみじみ感じました。
うるう時間導入で私たちの生活・仕事は何が変わる?
「結局、私たちの暮らしにはどんな影響があるの?」というのが、いちばん気になるところですよね。
ここは分野を分けて見ていきます。
日常生活への影響はほとんどない
先ほども触れたとおり、UTCとUT1のズレが1時間分たまるまでには、数百年単位の時間がかかるとされています。
なので、私たちが日常生活のなかで「うるう時間」を意識する場面は、まずやってこないと考えて良さそうです。
スマホの時計が急に狂ったり、電車の時刻表が乱れたりするような話ではないんですよ。
これまでのうるう秒でさえ、廃止が決まっても「一般生活への影響はない」と言われていたくらいですから、うるう時間ならなおさらですよね。
IT・システム分野で意識しておきたいこと
一方で、時刻同期を扱うITシステムの現場にとっては、無関係ではいられない話です。
これまでうるう秒のたびに必要だった「60秒目を挿入する」といった特殊対応そのものが、基本的には不要になっていく見込みだからです。
対応漏れによるシステム障害のリスクが減るという意味では、むしろ歓迎できる話やと思うんですよね、正直。
ただし、UTCとUT1のズレそのものは、この先も少しずつ開いていきます。
数百年後にどう対応するかは、いま生きている私たちではなく、遠い未来のエンジニアさんたちの宿題になりそうです。
なぜうるう秒は廃止され、うるう時間に置き換わるのか
ここまで「何が変わるのか」を見てきましたが、そもそもなぜこんな変更が必要になったのでしょうか。
背景を掘り下げていきます。
過去に起きたシステムトラブル
うるう秒は、コンピューターにとって想定外の「60秒目」が発生するイベントです。
2012年7月にうるう秒が挿入された際には、特定バージョンのLinuxカーネルの不具合により、サーバーのCPU使用率が100パーセントに張り付いてしまう現象が各地で発生しました。
MySQLやJavaといった、複数のスレッドで動作するソフトウェアを使っていた環境が特に影響を受けたと報告されています。
海外ではLinkedInやYelp、Mozillaといったサービスで障害が出たほか、オーストラリアのカンタス航空ではチェックインシステムが停止し、しばらく手作業での対応を強いられたと伝えられています。
日本でもmixiがつながりにくくなり、さくらインターネットは自社サービスへの影響を正式に報告していました。
さらに私が調べていて驚いたのが、2015年7月1日のうるう秒挿入時のできごとです。
気象庁は、緊急地震速報に利用している海底地震計のうち、東南海ケーブル式海底地震計の5点とDONETの2点、合わせて7つの観測点について、当日の午前8時50分から午前9時5分頃まで、データ利用を一時停止する措置を取っていました。
挿入されたうるう秒のあいだのデータが破棄されることで地震波形に不連続が生じ、地震波の振幅や到達時間を誤認するおそれがあったためです。
停止中に地震が発生した場合、速報の発表が最大12秒ほど遅れる可能性もあったとされています。
たった1秒の調整のために、地震速報という命に関わるシステムまで一時的に守りに入っていたわけです。
これ、正直かなり衝撃的な事実だったんですよね。
「負のうるう秒」への懸念
もうひとつの大きな懸念が、「負のうるう秒」です。
これまで実施されてきたうるう秒は、すべて1秒を「加える」調整でした。
ところが2020年以降、地球の自転速度がやや速まっている影響で、逆に1秒を「減らす」負のうるう秒が必要になる可能性が出てきています。
BIPMの決議案では、2035年までに負のうるう秒が必要になる確率を、約30パーセントと推定しているんです。
負のうるう秒は過去に一度も実施されたことがなく、対応が不十分なシステムでは、想定外の障害につながる恐れがあると指摘されています。
未知のトラブルが起きるかもしれない仕組みをわざわざ残しておくくらいなら、思い切って「ズレを許容する」方向に舵を切ったほうがいい。
そう判断されたのではないか、というのが私の理解です。
まとめ
最後に、この記事の内容を整理しておきますね。
- うるう時間とは、UTCとUT1のズレを最大3600秒(1時間)まで許容する新しいルールのこと
- 毎年1時間ずつずれるわけではなく、ズレが1時間分たまるまでには数百年単位の時間がかかる見通し
- うるう秒は0.9秒以内におさまるよう1秒単位でこまめに調整、うるう時間はズレをためて数世紀にわたり調整不要にする発想
- うるう年は地球の公転のズレ、うるう秒・うるう時間は自転のズレを調整するもので、直接の関係はない
- 2026年10月のCGPMで採択されれば、2027年5月20日から新ルールに移行する見込み
- 日常生活への影響はほぼないが、ITシステムの現場ではうるう秒対応の負担が軽くなる
- 過去には2012年のシステム障害や、2015年の緊急地震速報の一時停止など、うるう秒がもたらした具体的な影響もあった
調べてみて感じたのは、「うるう時間」という言葉の見た目のインパクトと、実際に起きることの中身に、かなりギャップがあるということです。
1日が25時間になるわけでも、時計が急に狂うわけでもありません。
むしろ、これまで数年おきに世界中のエンジニアさんを悩ませてきた「うるう秒」という細かい調整作業から、みんなが解放される話なんですよね。
地味だけど、実はけっこう大きな肩の荷おろし。
10月の採決がどうなるか、私も引き続き追いかけていきたいと思います。


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